骨折

みなさんこんにちは。
開発担当の森亮一です。

どこの整形外科でも、毎日だいたい100人前後の患者さんが受診しています。
整形外科ですので、当然毎日のように骨折した患者さんが来ると思われていますが、実はそれほど多くありません。
救急病院は別として、一般的なクリニックの場合は月にせいぜい2~3人です。
周りにも骨折を経験した人はあまりいないと思います。
それだけに、骨折した時は牛乳を飲んでカルシウムを補給すれば早く治るのか?など分からない事も多いと思います。
そこで今回は、骨折したところはどんな風に治っていくのかを細かくご説明したいと思います。

まず骨の成分ですが、ざっくり分けるとカルシウムが70%水分が10%、たんぱく質などの有機物が20%になります。
ですので、成長期の子供たちに牛乳などカルシウムを多く含む食事を与えることは非常に重要です。
しかし、いくら丈夫に育てても、強い力で捻ったりぶつけたりすると折れてしまうこともあります。
骨折すると、元通りに繋がるまで相当な時間がかかることは言うまでもありませんが、ほぼ元の強度に戻るのに早くても2~3ヶ月はかかります。
骨折後、初期の段階では折れたところがグラグラして痛いので、たいていギプスシーネというものを1ヶ月近く当てて固定します。
この固定期間が終了してもまだ十分な強度には達していないことが多いので、体重などの負荷をかけるにはもうしばらく時間が必要になります。
そうこうしてるうちに徐々に骨が出来てきて、めでたく骨癒合を迎え、歩いたり体重をかけたり出来るわけですが、例えばこの治癒過程にカルシウムを補給すると早く治るでしょうか?
気になるところですね。

骨折を病理学的に説明すると、まず骨の表面の骨膜が破れ、そこにある血管から出血します。
そしてその下の皮質骨という硬い骨も割れ、内部の海綿骨という少し柔らかい骨が露出し骨髄からも出血します。
(骨折すると非常に強い痛みがありますが、これは骨膜が破れる時と骨髄圧が下がる時の痛みです)
そして、骨折の中心部分には血種という血の塊が出来て、この血種が新しい骨を作る引き金になります。
数年前に東京大学の研究グループが、骨折治癒過程において、ガンマデルタ(γδ)T細胞という特殊な免疫細胞が重要な役割を果たしていることを発見しました。
つまり、骨折にも免疫が働いているという事ですね。

この免疫系の細胞が骨折部に集まることで炎症反応が起こり、デコボコした骨折面を平らにする破骨細胞が出現します。
この時にレントゲンを撮ると、初めはヒビが入ってるかどうか分からないような骨折も、薄っすらとスジが入ったように写ります。
そして次に骨芽細胞という骨を産生する細胞が出現し、骨折部を囲むように骨が出来てきます。

この取り囲む骨を仮骨といいます。
この仮骨にカルシウムが多く含まれるため、レントゲンを撮ると骨折部を取り囲む様子が写ります。
ということは、この時期にカルシウムを摂ればもっと仮骨形成が進んで早く治るかもしれません。

しかし、仮骨形成を進めているのは血中のカルシウムではなく、あくまでも先ほどお伝えした免疫細胞の働きです。
よって、いくら血中カルシウム濃度を上げたところでそれが免疫細胞に働くことはないので、残念ながら骨癒合が早まることはありません。

仮骨は、骨折部の炎症とその免疫細胞の働きによって形成され、その過程は一連の流れになるので、遅くなることはあっても早まることはありません。
骨折直後は微熱も出るほど全身的なダメージがあるので、骨折部の固定と同時に、しばらく体を休めることが大切です。
そうすることで全身の免疫系がしっかりと働き、仮骨形成を促してくれます。

結論として、骨が折れたら牛乳ではなく、安静ということですね。

以上、骨折のお話でした。

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