学会でのお話③

中国・武漢で新型コロナウイルスが発見されて以降、日本で初めて患者が発見されたのは、2020年1月のダイヤモンド・プリンセス号でした。

このダイヤモンド・プリンセス号のニュースが出てすぐに、尾身氏を含めて感染症の専門家たちは、既にこの謎ウイルスに対する対策を政府に伝えて行動に移す予定だったそうです。
ここまではなかなか迅速な対応ですね。

しかし、せっかく用意したその対策も、行動に移すには様々な壁がありました。

 

その第一の壁は個人情報です。

対策を実行するために国民からたくさんの情報を得ようとしても、日本では個人情報を優先する声の方が大きく、未知の情報を得ることが出来ませんでした。

そのため専門家でさえテレビから情報を得ていたそうです。

 

そして次の壁がパンデミック時(非常事態時)のIT化の遅れです。

欧米諸国では、直ちに新型コロナ対策センターが設置され、スタッフの前にはNASAで見るような大きなモニターがあり、すべての情報をデータ化して一元管理し、スタッフ全員で共有することが出来ていました。

ところが日本ではその時、どこにでもある会議室のような所に人が集まり、手書きの情報をケータイでやり取りしていたそうです。

30~40年前の日本と変わりませんね…。

 

更には、危機管理に対する優秀な官僚たちでも今回はどうしようもなかったため、専門家たちのアドバイスを聞きながら策を練っていたそうです。

当初から感染症の専門家たちは、対策案を100以上政府に提案し、そのほとんどの案が政府に通っていたそうですが、当然ながら中には反対意見も出ていました。

皆さんも特番やニュースで覚えているかと思いますが、専門家と政府が対立しているかのような報道が多かったように思います。

本当はほとんどの意見を政府が取り入れていたにもかかわらず、わずかに意見が合わない部分だけがクローズアップされて報道されたそうです。

下世話な話ではよく見かけますが、大事な話はちゃんと報道してほしいですね…。

 

日本では、緊急事態が生じた際にその道の専門家に意見が求められ、その意見が政府に伝えられた後に、政府からマスコミを通して国民に伝えるという流れになりますが、なぜかコロナの時だけはマスコミの要請で、政府の発表をすっ飛ばして、尾身氏がNHKで国民に発表することになったそうです。

しかも、その後もずっと慣例的に記者会見するようになったので、国民から「コロナの対策方針は政府ではなく専門家が決めているのか…」という印象を与えてしまったようです。

尾身氏もなぜそのような流れになったのかは未だに分からないと言っていました。

これって政治家特有の他責思考を感じますね…。
(続く…)

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