みなさんこんにちは。
開発担当の森亮一です。
みなさんギプスはご存知ですね。骨折の治療に使うアレです。
今日は、一般人にはあまり知られていないギプスのお話をしたいと思います。
医療現場で使われている器具や材料は日々進歩していますが、その中でもギプスの進歩は、患者側だけでなく我々整形外科医にもありがたいものになりました。
ギプスの始まりは、実はメソポタミア文明にまで遡るのですが、実際に現場で活躍するようになったのは、1852年にオランダの軍医が、戦争で負傷した兵士の腕や足を固定するために石膏で固定する方法を開発したのが始まりです。
ちなみに石膏とは、硫酸カルシウムを水で固めたもので、彫刻で見たことありますよね。
実際の使用法は、まず患部に包帯を巻き、その上から泥状の石膏を手で塗っていきます。
石膏は時間が経つと徐々に固まっていくのですが、表面がデコボコのまま固まってしまうので、ヘラなど使って出来るだけ表面が滑らかに平坦になるように形を整えます。
しかし、固まると石のよう重たくなるので出来るだけ薄く作る必要がありました。
腕のいい整形外科医は、ギプスの厚みが薄く均一になるよう作ることが出来ました。
この石膏ギプスは、近年まで長い間医療現場で活躍していたのですが、白い石膏があちこち付いて汚れたり、作製に手間と時間もかかっていたので、その後改良が加えられて巻きやすいものへと進化しました。
そして次に登場したのが、幅が20cmほどのロール状の石膏ギプスです。
ロール状に巻かれた薄い網目状のシートに乾いた硫酸カルシウムが付着しており、ロールのまま水に浸して軽く絞った後、そのまま患部にグルグル巻きつけて固めるものです。
これがとても優秀で、それまでの粘土のような石膏に比べ非常に扱いやすく、出来上がりも均一でそれまでの石膏より軽いです。
私が研修医の頃は、ほとんどこれでした。
このロール状ギプスが好評で、体のどこでもグルグル巻きつけやすく、巻き上がった後に濡れた手で擦れば表面がツルツルになり見た目も綺麗に仕上がりました。
ここで、ギプス材料はやっぱりロール状!という概念が標準的となり、そして更に早く固まって軽いものへと進化していきました。
そして次に登場したのが、グラスファイバー(ガラス繊維)製ギプスです。
ロール状の石膏ギプスとほぼ同じ大きさのグラスファイバーのロールですが、それまでの工程と同じように、これも一旦水に浸してから巻き付けていくやり方です。
ロール状の石膏ギプスと違って速乾性があり、重量も半分以下になりました。
しかもグラスファイバーなので耐久性も抜群です。
石膏ギプスは、足に巻いてそのまま歩けば数時間で割れて壊れてしまいましたが、グラスファイバー製ギプスは何日も壊れずに歩くことが出来ました。
このグラスファイバー製ギプスが現在の主流となっています。
これと並行して手術の方法も素晴らしく進歩しており、体の負担が少ない方法が次々と発表されています。
一般の方々には今でも手術に対する不安や抵抗があると思いますが、今ではこのような進歩のおかげで、骨折のパターンによってはギプス固定するより手術の方が経過良好で早く社会復帰できる場合も多く見られるようになりました。
というわけで、私が整形外科医になってから今日までに、次々と進化を遂げたギプスですが、これからも更に新しい固定材料が生まれると思います。
今以上に安心できる治療法が近い将来きっと出てくると思いますが、最も大切なのはやはり怪我しない事ですね。
みなさん!注意一秒怪我一生ですよ。