痛み止め

みなさんこんにちは。
開発担当の森亮一です。

今回は「痛み止めを飲むとなぜ痛みが取れるのか?」というお話です。

痛み止めで有名なのは、昔から「アスピリン」ですね。
完全に痛みが消えるわけではないですが、飲むと確かにマシになります。
痛み止めは、ヒポクラテスが柳の木の皮に解熱鎮痛作用があることを発見したのが始まりと言われています。
柳の木の皮のサリチンという成分に抗炎症作用があることが分かり、サリチンを研究してアスピリンが誕生しました。

ちなみに、痛みにも種類があって、打撲や捻挫などの怪我をした時の痛みは「侵害受容性疼痛(しんがいじゅようせいとうつう)」といいます。

侵害受容性疼痛は、例えば足を捻った場合、その瞬間は足の関節周辺の靭帯が引き伸ばされたり、関節軟骨が強く擦れることで痛みが出ます。
この最初の痛みは、熱いものに触れた時に手を引っ込める反射とほぼ同じ反応ですが、怪我の後しばらくして局所の炎症が始まります。

炎症とは、赤く腫れて熱感と痛みがある状態のことですが、軽い怪我なら、最初の痛みだけで炎症は起こりませんが、大きい怪我の場合は、その後徐々に痛みが強くなり、赤く腫れ上がってきます。
これは、捻った刺激で炎症反応にスイッチが入り、炎症を引き起こす物質(血漿キニンプロスタグランジンという物質)が出て起こる現象です。

この血漿キニンやプロスタグランジンが炎症反応の原因なので、これらが怪我した時に体の中で合成されないようにすれば、痛みが取れるという理屈になります。
この理屈をもとに様々な痛み止めの研究が始まりました。

特にプロスタグランジンという物質は、痛みだけでなくその他の症状も引き起こすちょっと厄介な物質です。
ですので、炎症反応が始まったら出来るだけ早めにプロスタグランジンの合成を止めたくなります。
ところが、このプロスタグランジンには、血管や気管支の太さを調整したり、胃酸の分泌を調整したり、中枢性けいれんを抑制したりと、結構人間にとって必要な反応もコントロールしている事が分かりました。
ということは、プロスタグランジンの合成を止めてしまうのもあまり良くありません…。

止めてしまう事で有名なのは胃潰瘍です。

プロスタグランジンは、胃酸が過剰に分泌されるのを抑制してくれるのに、痛み止めのせいでバンバン胃酸が出てしまい、そのせいで胃の粘膜が溶けてしまうのです。
近年、プロスタグランジンの良いところを残すような痛み止めも開発されましたが、開発が進むうちに、そもそも人間の感じる痛みは炎症反応だけが原因ではないという事も分かり、痛み止め(抗炎症薬)の開発は少しずつ方向性が変わってきました。

まず、痛みの原因が侵害受容性疼痛だけではなく、神経そのものが原因の「神経障害性疼痛」というものも存在することが分かりました。

例えば腰椎椎間板ヘルニアになって神経痛が出たときに痛み止めを飲むと、初めの頃は効きますが、そのうち効かなくなります。
これは、痛みの主役が侵害受容性疼痛から神経障害性疼痛に変わるからです。

神経障害性疼痛は、先ほどの炎症による痛みとは違って、神経そのものが痛み刺激を脳に送り続ける痛みです。
つまり、プロスタグランジンによる痛みではないので、プロスタグランジンの合成を止めてもあまり意味がないわけです。

神経は体から脳へ、脳から体へいろいろな刺激を伝達する電線のようなものですが、手足から脳まで1本の線で繋がっているわけではなく、途中に途切れている部分があります。
これをシナプスといいますが、このシナプスから痛み刺激を伝える物質(神経伝達物質)がたくさん出て脳に痛みが伝わります。

この神経伝達物質を出すのにカルシウムイオンが大きく関与します。

ややこしくなってきましたね。もうこのあたりで読むのをやめる人がいるかも知れませんが、続けます。

シナプスにはカルシウムイオンがくっつく場所があります。
神経を伝って痛みの刺激がシナプスまで来ると、この部分にカルシウムイオンがくっつき、神経伝達物質が放出されます。
放出された神経伝達物質は、反対側のシナプスに取り込まれて次の神経に刺激が伝わります。
ということは、シナプスにカルシウムイオンがくっつかないようにすれば痛みが伝わらないということになります。
現在ここまで分かってきたので、今ではこのような神経痛専用のお薬もあります。

長くなりましたが、痛みは本当に色々あって種類も多いので、痛みを取るには、その痛みの原因を突き止める必要があります。

何でもかんでも同じ薬や治療法ではなく、痛みの場所はどこか、範囲は広がっているか、痛みが出てからどれくらい時間が経ってるか、痛みの強さは変わってきているか、などの情報を参考にしながら治療法を選択しなければなりません。

痛みの研究はまだまだ未知の部分が多いので、お薬の研究だけでなく、ほかの角度からも研究するべきですね。

ちなみに私は、腰が痛くなった時に娘に撫でてもらったらすごく楽になったのを覚えています。
実はこれもちゃんとした治療と言えるんです。

気持ちが楽になるだけで痛みも和らぐので、優しさも大事な痛み止めですね。

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